タイマッサージ講座 - 最新エントリー

タイマッサージの心(2)

カテゴリ : 
タイマッサージの技術
執筆 : 
camel 2011-11-8 9:50
前回タイマッサージを行う10の心得について書いたが、それは、お客様に対するマナー、あるいは、向上心を保つための心得であると解釈された方も多くいらっしゃったかと思う。もちろん、それはそれで正しいのだが、タイマッサージマスター達が「心」の重要性を語る理由は実は非常に技術的なことである。

人間の体というのは掌に対する感受性が異常に高い。手を握ってドキドキするだけでなく、握手は重要なコミュニケーション手段である。相手の手が自分の体に接するといろいろな情報が伝わってくる。タイマッサージマスター達はそれを「気」と簡潔に表現する。いい気を出すためにはいい心がなければいけない。だから心が大事なのだ、と言う。

これまでに数え切れないほどの多くの方からタイマッサージをしてもらったが、明らかにいい気を出している人と、いやな気を出している人がいる。いい気を出している人は、心優しく、まじめで、いつも微笑んでいて気配り上手な人が多く、悪い気の人は、時間や約束を守らず、それを悪いとも思わないような人が多い。悪い気というと何やら神秘的だが、技術的に解説すると、丹田への重心の座りが悪いとか、気が散っていたり緊張していたりして掌まで熱が伝わらず冷たかったり、変に汗ばんでいたりする。そして不連続でテンションに満ちたノイジーな圧を相手に与えながら、それが相手に不快感を与えるだろうということに思いが及ばないような感じが伝わってくる。体は不快感と恐怖で硬直しリラックスどころではない。いい気は逆に、圧が滑らかでゆったりしていて角がない、そのため安心感が抜群で身を委ねているうちに寝てしまうような感覚だ。身も心も緩んでいくことは言うまでもない。

その違いが前回の十か条を守っているかどうかで現れるのだと思う。ピシェット道場では、ピシェット師が毎朝「エゴをなくす」ことの重要性について説法を行い、ノーテンション、センシングという技術的なことに入る前に、仏への帰依による徹底的な心の修練に取り組んでいるが、それは技術的にも根拠のあることなのだ。仏教徒になったり、ヨガや禅に取り組むことは心の平安を得るための早道だと思うが、それだけがその方法ではないので、人それぞれ、自分に合った方法で健やかな心を育てたいものである
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タイマッサージの心

カテゴリ : 
タイマッサージの技術
執筆 : 
camel 2011-11-7 10:54
以前私が働いていた松下電器では、綱領信条七精神という、松下幸之助が定めた、仕事に対する心構えを毎朝唱和していた。内容は特に特別なことではなく、要約すれば「良心に基づいて、まじめに、人のために、日々努力しなさい」ということで、若い頃は何を当たり前のことを!と半ば形式的に参加していた。
社歌を歌うことや綱領信条七精神の唱和の真の狙いは実は別のところにあるとも言えるのだが、企業が何かを行うときの判断基準、倫理基準、そして、企業の存在意義であるので、ドラッカーも言っているように、企業にとって社是は必要不可欠なものである。中年以上の管理職は、年をとるほどに綱領信条七精神が仕事の拠り所になっていることを述懐するようになる。

そんな松下(現パナソニック)も円高には無力で、現在大変な苦境にある。このまま円高が数年続いたら、中国企業に買収されることも現実味を帯びてきた。一人一人が綱領信条七精神に基づいて考え行動するだけでは乗り切れない、難しい時代になってきたようだ。

さて、タイマッサージ。タイマッサージの世界にも守るべき心構えというものがある。

1.被施術者に対して慈悲の心を持ち、被施術者の見かけで応対を変えたりしない。
2.偉そうにすることなく、謙虚な心を持つ。間違っても、「治してやる!」というようなおごり高ぶった心は持たないこと。
3.被施術者の気配りに甘えて怠けたりしないこと。
4.絶えず細かい気配りをしなさい。
5.相手の幸せだけを考え、私利私欲をなくす。
6.自己の知識を見せびらかして、被施術者が信じてしまうような自慢をしない。
7.怠けない。手を抜かない。
8.公正公平にすること。えこひいきをしない。
9.運・不運、名誉・不名誉、賞賛・中傷、幸福・不幸、前進・後退等々を恐れず、すべてのものは自分の中に備わっていると信じて一心に施術にはげむこと。
10.邪心を持たないこと

これも、当たり前のことと思うかもしれない。しかし人間とは弱いもので、仕事をしていると、ついつい自分のエゴが出てきてしまうものだ。経験を積み、一生懸命勉強をして、自分の技術に自信がついてきた頃が一番危ない。そこで謙虚で優しい心を持ち続けることができるかどうかが、本当のタイマッサージの施術者になれるかどうかの分かれ目といえるかもしれない。
ピシット先生、ワンディ先生、その他どの有名な先生も、「最も重要なことは心だ」と口を揃える。心がなければ、いくら技術レベルが高くても、いくら経験を積んでいても、それはタイマッサージとは言えない
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治療マッサージとは、トリガーポイントを見つけて除去するプロセスであり、以下のステップを踏む必要がある。

1)患者さんにどこが痛むか、何をしていたか等々詳しく聞く
2)背骨や骨盤など、姿勢の歪みを視診する
3)解剖学の知識に基づき、どの筋肉に問題があるか類推する
4)触診してトリガーポイントを見つける
5)筋肉に応じて、適切なテクニックでトリガーポイントを除去する
6)ストレッチを行って筋肉を弛緩させる
7)症状が改善したか確認する
8)改善しなければ3に戻る

痛みの原因は多岐にわたり、また、患者によってもトリガーポイントが出来る場所は異なるので、豊富な知識と経験がなければできない。リラクゼーションマッサージのように特定のシーケンスを行えばいいというものではない。これが、多くのスクールに短期間の治療マッサージコースがない理由である。本人のモティベーションやセンスにも左右されるため、特に大人数に一度で教えるようなスクールで治療マッサージを教えることは通常不可能である。

ところが、バンコクのピシットタイマッサージトレーニングスクールにはレベル2(上級コース)として60〜120時間で習得できる治療マッサージコースが用意されている。しかも内容は、症状別に、決まったシーケンスを行うだけである。解剖学の知識が余りなくても、まるで、基礎コースを覚えるように順番を覚えるだけで習得できるものだ。

なぜ、そんなことが可能なのか? ピシット先生は、先生の元を訪れる患者さんを治療しているうちに、ほとんどの患者さんは10程度の典型に分けられることに気がついた。上記治療マッサージのプロセスで治療を行うのだが、長年行っているうちに、こういう症状のときはこれをやれば間違いがない、というようにパターン化することに成功したのである。例えば腰痛はどこが痛いかによって2〜3パターンに分けられ、そのパターンに応じて、指圧とストレッチ、そして筋肉を動かしたり揺らしたりする手技を組み合わせる。これでほとんどの症状が治ってしまう。もちろん指圧する際には、トリガーポイントを指先で見つけて命中させる触診力は必要なので、一応、一年以上のマッサージ経験がある人が対象のコースとなっている。しかし、10分程度の定型手順で症状が改善するというのは驚くべきことだ。なぜそんなことが可能かというと、ストレッチテクニックが豊富で強力だからだ。ストレッチだけで治ってしまうことも多々ある。ストレッチならばトリガーポイントを見つけられなくてもできるし、患者さんが家で自分で行うこともできる。ピシット先生の治療マッサージコースは、長期の経験も必要なく、また、比較的短期間で習得できる素晴らしいコースである。

寿司や大工の職人の世界では、「見て盗め」とか言って、弟子を長年こき使いながら技術を出し惜しみするのが、経験や知識を安売りしない一つの手法となっているが、手技療法の世界も例外ではない。ところが、ピシット先生は例外的に、自分の長年の経験を一つのコースにまとめ、惜しげもなく教えているところが素晴らしい。

ピシットタイマッサージスクールJapanでは、バンコクでのレベル2のコースを忠実に再現するだけでなく、さらに、個々のシーケンスを行う解剖学的な意味や、トリガーポイントの見つけ方について丁寧に説明することを心がけている。もちろん、タイマッサージで治療をうたうことは法的に問題があるが、ピシット先生のテクニックはすべて安全性が十分考慮されているので、リラクゼーションマッサージのシーケンスの流れの中に挿入し、痛くない程度に行うことで驚くべき効果が得られる。セラピストとしてステップアップするきっかけとなるだろう
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バンコクのワットポーTTMスクールには治療マッサージ(セラピーマッサージ)のコースがある。以前は5日間のコースだったが今は10日間になっている。教科書には頭痛、肩凝り、腰痛等の症状別に、指圧すべきポイントが人体の絵に記されている。非常に大雑把な絵で、そのポイントが実際の体のどの筋肉のどの部分に対応するのかは先生に教えてもらわないとわからない。

いや、教えてもらってもよくわからない。5日間に渡り、教科書を元に、そのポイントを教わり、そこを強く指圧することを学ぶ。つまり、そのレッスンは症状別に押すべきポイントを覚えることで完了する。

私は熱心に学んだつもりだったが、結局よくわからず、身につかなかった。ポイントが何だったのか、それはツボだったのか、なぜそのポイントを押すと症状が改善するのか、さっぱりわからなかった。わからないことは身につかない。10年ほど前のことだ。

今となっては、そのレッスンの意味がわかる。ワットポーの教科書はタイ厚生省の教科書のイラストと同じである。そして、そのポイントのイラストはトリガーポイントセラピーの本のポイントと驚くほど一致する。

治療マッサージとはトリガーポイントの除去である。ツボ刺激や電気治療といった痛みを緩和する方法論もあるが、痛みの根本的治療法としてトリガーポイント理論が世界的に主流になっている、施術者同士の共通言語になってきていると感じる。

ワットポーの治療マッサージはトリガーポイント理論そのものだったのだ。レッスン中になぜ理解できなかったかというと、当時の私に解剖学的な知識がなかったこと、そして、練習相手の体が健康体でトリガーポイントを指で感じることができなかったこと、そして、一番重要なことだが、先生が、このポイントはトリガーポイントであり、それを指で感じることを教えてくれなかったことにある。

ワットポーの治療マッサージを身につけようと思ったら、まず解剖学の勉強をしなければならない。そして、筋肉の硬直やトリガーポイントが骨格や動きの歪みにどう影響するのかを学び、患者からどこに痛みが発生するかよく聞き、体の状態を視診し、どの筋肉に問題があるかを類推し、実際にその筋肉を触診してトリガーポイントを探し、それを的確に消滅させなければならない。トリガーポイントの治療は、垂直指圧だけでなく、クロスファイバーストローク(ジャップセン、キアセン)やダイレクトストレッチ(オイルをつけた皮膚の上で圧をかけながら指を滑らせる)を併用する。トリガーポイントの周囲の筋繊維は柔軟性を失っているので、筋繊維を傷つけないよう注意しながら慎重にゆっくり行う。局部的な指圧は筋繊維を傷つけやすいので、肘や膝を使った方がいい場合も多い。

ワットポーで教えてくれたことは、この一連のプロセスの中の、「症状別にトリガーポイントができやすい場所」だけであった。身につくわけがない。

治療マッサージを身につけようと思ったら、まず解剖学の勉強をすること、そして多くの体に接する経験を積むこと、そして、正しいテクニックを教えてくれる先生について、マンツーマンで学ぶことである。症状別に一連のシーケンスを定めていて、それを行えば症状が軽減するということを教えるスクールもあり、それはそれで有効なのだが、治療の確率を上げるためには、まずトリガーポイントの所在を指先で感じ、凝った筋肉が骨格をどう歪ませているか、あるいはトリガーポイントがどこに痛みを発生させているか、こういったことをイメージできる知識を持っていた方がいい
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タイマッサージについて勉強熱心な人ほど、解剖学や症状軽減に興味を持ち、そして、例えば鍼灸按摩マッサージ国家資格保有者に比較して自分の治療能力の低さにコンプレックスを持つ傾向がある。そして、鍼灸や整体を学び、治療できるようになりたいと考える。スクールで習ったシーケンスを順番通りに行うリラクゼーションマッサージは格下のものだと考える。

そういう趣向、能力を伸ばす方向性を否定するつもりはないが、いくつか間違った認識が含まれているような気がする。まず、考えなければいけないことは、リラクゼーションマッサージと治療マッサージは、目的も方法論も全く異なるものだということである。「タイマッサージ」を一つの手技体系だと考えてしまうと、症状軽減を行っている施術者を見て劣等感を感じたり、自分がやっていることの意味についてわからなくなってしまうことある。今まで学んできたことは何だったのか、これから学ばなければいけないことは何なのか?

タイマッサージスクールで最初に習う基礎コースのシーケンスは通常、リラクゼーションマッサージである。以前、「いいマッサージとは」という連載で極めるべき技術について述べたがそれも基本的にはリラクゼーションマッサージについてである。リラクゼーションマッサージの目的はその名の通り、体と心を「リラックスさせる」ことにある。痛くない、気持ちのいいタイマッサージを全身のセン、筋肉に施すことにより、筋肉を緩め、血行を促進し、副交感神経を優位にする。その結果、活性化していたトリガーポイントは消滅はしないまでも活動は収まり、自然治癒力の回復により体の状態は快方に向かう。通常はこれでよい。この技術を極めるだけでも価値はあるし、極めることはそれほど簡単ではない。また、法的にも、お客様のニーズ的にもこの範囲から逸脱することはタイマッサージに求められていることではないように思う。

治療マッサージの目的は、腰痛や膝痛などの特定の痛みを軽減することである。方法論はリラクゼーションマッサージとは異なり、痛みの原因になっているトリガーポイントを探して除去する、あるいは、痛みの原因になっている特定の筋肉をストレッチ等のテクニックで的確に弛緩させる。熟練者が行えば15分程度で終わり、やり方によっては強烈な痛みを伴うこともある。このため、施術後の感想は「気持ちよかった〜、寝ちゃった」ではなく、汗をかきながら「すごかったなあ、痛かったなあ 」になる。もちろんそれはテクニック次第なので、痛くない程度に長時間行えば気持ちのいい範囲内でトリガーポイントを除去することはできる。しかしとにかく、痛みの原因を類推し、見つけ、取り除くというプロセスは、定型のシーケンスをこなすリラクゼーションマッサージとは全く異なるものである。

タイでは、日本のように治療は鍼灸按摩マッサージや整骨院、整体、カイロ、リラクゼーションはスパ、タイマッサージ、バリマッサージといった市場の住み分けがなく、どちらも「タイマッサージ」というジャンルが担う。このため、タイマッサージの有名な先生が治療マッサージを行うことは珍しいことではない。逆に言えば、治療マッサージをできる先生が有名な先生となる。

このような、市場セグメント、顧客ニーズの日タイの違いを考えれば特に治療マッサージに拘る必要はないと思うが、治療マッサージについて知っていることはマイナスにはならない。治療マッサージについて、何回かに分けて書いてみようと思う。
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強さと回数

カテゴリ : 
タイマッサージの技術
執筆 : 
camel 2011-3-22 13:27
ピシット先生がバンコクで患者さんを治療する時間は通常15分である。患者の状態を見て、聞いて、触診した後に、強烈な指圧、またはエルボー圧をドーンドーンと入れ、そして、強烈なストレッチをいくつか行う。そして、その効果を確かめながら、別の、あるいはより強い指圧またはストレッチを行う。数分で終わってしまうこともある。その間、患者さんは気の毒なほどに痛がり、涙目になる。ロイヤルマッサージを代表とするバンコク系の治療マッサージは概ね、こんな感じだ。
一方、チェンマイのマッサージマスターたちは長時間かける人が多い。ピシット先生が15分で終わらせてしまうことを、2時間かけて行う。指圧やセン弾きを繰り返し繰り返し行い、関節の可動域の変化を確認しながら、また、繰り返し繰り返し行う。関節をぐるぐる回したり、曲げ伸ばしして筋肉を動かすことも多い。いわゆるストレッチというよりは、筋肉を動かしてリラックスさせている感じに近い。その間、ほとんどの患者さんは寝てしまう。それほど気持ちよく、痛くても眠りを妨げるほどではない。

この違いをどう考えたら良いのだろうか。どちらが正しいのだろうか。
私は、強さと回数の違いだと考えている。ひとつのトリガーポイントを、あるいは凝った筋肉を弛緩させるためには一定の力が必要だが、それを一気に強烈に与えるか、小さい力を繰り返し与えるか二つの方法がありうる。前者は強烈ゆえに痛みを伴うが、時間は短時間で済む。後者は、痛みがない代わりに時間がかかる。トリガーポイントの消失は、与える力の積分値で決まるので、どちらの方法でも、力が一定量に達したら同じようにトリガーポイントは消失する。つまり、どちらの方法も正しい。

なぜ地方によってこのような違いがあるのかは謎だが、北方系(フォークマッサージ)は、医学的な知識や解剖学の正規の教育を受けていない田舎の人たちが、より安全サイドで施術を行ってきたために痛みを伴わない強度が一般的になったのかもしれない。バンコク系は多様な学者や医者によって解剖学的な裏づけがあるので、安全性を十分に考慮した上で強烈な手技(=効果の高い手技)を行うようになったのか、あるいは、東京でクイックマッサージが流行っているように、バンコクは忙しい人が多い都会なので、短時間で済むことが好まれるのかも知れない。

いずれにせよ、施術方法の選択肢が複数あるのはいいことである。今回は強さと回数の違いについて述べたが、それ以外にも色々なことがスタイルによって異なる。異なっていても、同様の結果を生むことが多い。色々なスタイルがあると、どのスタイルを選ぶかは、患者さんの好みでも選べるし、施術者は患者さんの状態に応じてどのスタイルでアプローチすべきかを考えることができる。国家資格化や標準化は必要なことだが、ひとつのやり方に統一する必要はない。世界の言語が多様であることが文化の多様性の保存に繋がっているように、タイマッサージの多様性も末永く継承されていくことを願っている
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ここまで、多くの文字数をさき、私なりに考え、分析し、いいマッサージについて書いてみた。わかったようなことを書いてしまったが、実は私もまだまだ未熟者で、書いておきながら自分で実践できていないことも多い。そして、まだまだタイマッサージについてわからないことが多い。

ピシット先生によると、同じセンを指圧する場合でも指を置く方向によりセンを流れるエネルギーの方向が変わるそうだ。また、指から気が発せられるので、健康な気を発することができるように、施術者の心と体が健康であることが重要だということだ。

私は、気やエネルギーを、神経を伝わる響き、音色として解釈したのだが、そうではなく、熱や電磁波のようなものなのかもしれないし、心から心に直接的に作用するテレパシーのようなもの(人はラジオの電波のような電磁波を発して相手に情報を伝達するという説がある)なのかもしれない。

そういう未知の領域については今後の宿題だが、ここまで書いてきたことをまとめると、タイマッサージのスタイルは楽器のようなものであり、スタイルの違いに関わらず追求すべき本質的なことは音楽性の追求ということになる。

チェンマイスタイルとピシットスタイルの人はそれぞれ異なる楽器の演奏者と言える。ピアノの名人であっても、バイオリンを渡されればどう演奏していいのかもわからないだろう。スタイルが違うというのはそういうことだ。
しかし、どの楽器の奏者も音楽を奏でるということは同じで、お互いにその音楽性に感動する。楽器の違いとは別の次元で、音楽性の優劣がある。だから、一つのスタイルを選んだら、他のスタイルのテクニックに惑わされることなく、そのスタイルにおいて音楽性を追求するのが正しい練習だ。追求した結果、生み出される音楽は一つではない。施術者の体型、指の形、性格の違い、そういうものが音楽に個性をもたらす。個性あるタイマッサージを受けるのもまた楽しい
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指圧によって発生する、神経を伝わる響きは、音楽の音のようなものであり、音色の美しさが大事なことはこれまでに述べた。もう一つ大事なことは、音の間隔である。指圧はどういうリズムで行うのがいいのか?

これは、理論的に考えるとよくわからないのだが、経験則から、呼吸のリズムが望ましいことがわかっている。つまり、吐く息に連動させて腰を持ち上げて圧を入れ、吸う息に合わせて腰を下げて圧を抜く。呼吸と連動させた体重移動は滑らかで深い圧を入れるにも適しているが、そのリズムも快適さの重要な要素だ。
なぜそうなのかは、音色を楽しむのにそこそこの時間が必要だからではないかと考えている。以前、テレビを見ている時に指揮者の小澤征爾が、オーケストラの弦楽器走者に「ここは、もっと、歌って、十分に歌って!」と指示していた。歌うというのは音色を十分に共鳴させ、響かせるというような意味である。カラオケで歌う際も、音階を追うだけでなく、喉の共鳴を十分に効かせて声を響かせるべきところがある。音が十分に響くのを聞くのは、おいしい料理を味わうようなものだ。それには時間が必要だ。

タイマッサージで、音色を楽しむための適切な「歌う」時間が呼吸のリズムになる。これより長いとくどいし、短いと物足りない。施術の最初から最後まで乱れぬ呼吸のリズムで行う理想のタイマッサージだ。

呼吸のリズムで行う流派の代表がワットポースタイルだ。タイ厚生省スタイルやピシットスタイルも呼吸の連動を重視する。

チェンマイスタイルやシンチャイ先生が得意とする四指を使ったクロスファイバーストロークは、呼吸と連動していない。そもそも指圧するときに腰を持ち上げないことが多く、指を歩かせるように移動していくので、呼吸よりも早いリズムで指圧を入れていくことになる。それでも、上手な人が行うと、響きを歌わせることはできる。呼吸と連動しないリズムでもそれは音楽であり、どちらの音楽が好きかは、好みの問題だろう。

ただ、私はやはり、呼吸と連動している方が気持ちいいと思うし、また、呼吸と連動させた腰の上下運動で指圧を行えば、初心者でも比較的容易に歌わせることができるので、ピシット、タイ厚生省、ワットポーはスタイルとして優れていると思う
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前回は垂直指圧で美しい音色を奏でる方法について述べた。まとめると、

1)背筋を自然に伸ばした正しい姿勢
2)ポイントに正確に母指をセットし、四指で後側をサポートする
3)腕を真っ直ぐにして手首を固定する
3)通常の呼吸の吐く息に合わせてお尻を持ち上げていく。このときに押すという意識は持たない。丹田をポイントに寄せていくつもりで自分の上半身は脱力していること
4)息を吐ききったところで一瞬静止するが、息を吸い始めたらそれに連動させてお尻を下げて圧を抜いていく。同時にポイントを移動する。

この繰り返しとなる。二人で交代しながら、それがどういう感覚を身体にもたらすか確認しつつ、繰り返し練習すれば美しい音色を無意識に安定して奏でることができるようになる。

タイマッサージの指圧では、もう一つ、キアセンという解し方がある。ジャップセンとも言う。西洋医学的な言い方はクロスファイバーストロークストレッチである。
キアセンは、母指または四指でセン(ロープ状に堅くなった筋繊維)を弾く。ギターの弦を弾いて音を出すように弾く。あるいは、円を描くように回しながら弾く。このときに大事なことは手首を柔らかくしてスナップを効かせ、セン上を常に均一でマイルドな圧で指を移動することだ。やったことがない人は何を言っているのかよくわからないと思うので、また音楽に例えてみる。

バイオリンやピアノを習うときにまず言われることは、手首を柔らかく使うことだ。手首を固定しないことによって指先に繊細さが生まれ、美しく透明な音が生み出される。垂直指圧はゴルフやテニスのように手首を固定するのに対し、キアセンでは手首を開放する。また、体重を乗せずに手先だけで行う。その意味でキアセンはより音楽に近いと言っていいかもしれない。そして、かなり練習しないとコツがつかめない、より高度なテクニックであるが、上手に行うととても気持ちよく、そして筋肉を解す効果も高い。

スポーツの基本に通じる垂直指圧、楽器演奏の基本に通じる水平弾き、これらを組み合わせながら施術は進んでいくが、次回は音楽の最も重要な要素であるリズムについて説明する

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マッサージ、そして指圧の目的は筋肉を弛緩させることだから、凝った筋肉やトリガーポイントを解せば目的は達成される。解すためには、押したり、摩ったり、揉んだりと色々なやり方があり、そんなことをしているうちに徐々に解れていくものなのだが、とにかくいじればいいというものではない。凝りを解すための力が皮膚の下の毛細血管を傷つけて青あざを作ったり(これは皮下脂肪の厚い人に強い指圧をする場合は避けられないこともある)、筋繊維を傷つけて、コリをより悪化させてしまうこともある。いわゆる揉み返しだ。

そして何より、下手な指圧はされている人に不要な苦痛や不快感を引き起こす。人間の触覚は、身体にとって悪である刺激を排除しようとするからだ。その感度と刺激の識別能力は非常に高いので、施術をしている人の心の状態までも感じ取ってしまう。

基本を知らず、そして練習をしていない人の指圧は通常、ひどいものである。ノイズだらけで、不快この上ない。なぜかというと、人の筋力というのはトレーニングをしなければ、不安定で不正確なものだからだ。(余談になるが、これは逆に言えばトレーニングによって多種多様な目的に対して正確な身体運動をすることができるようになるということで、下等動物のように一つの目的のために正確な能力が固定されていないことこそが、人間に無限の可能性を保証している。)
不正確な例えとして、例えばゴルフ。ボールを真っ直ぐ飛ばせばいいのだが、初心者はボールにクラブを当てることすら出来ない。手首をしっかりと固定し、腕を真っ直ぐにして腕力を封印し、肩をリラックスさせて、丹田に重心をしっかり意識し、背筋を真っ直ぐに伸ばして回転軸として、腰から回転を誘導するということを行って初めて正確なショットを打つことができる。

タイマッサージの垂直指圧もターゲットに正確に指をセットし、手首を固定して腕を真っ直ぐにして背筋を伸ばして、息を吐きながら腰を持ち上げて丹田を寄せていくことでスムーズかつ力強い圧を真っ直ぐに落としていくことができる。さすがにゴルフほどは難しくないが、基本は同じだ。

この基本を守らずに、握力や腕力に頼って指圧を行うと、圧力の上がり方が不連続になり、ノイジーになり、方向が定まらず、ターゲットに対して美しい圧は入らず、周囲の筋繊維を傷つけることになる。人体はこのような身体に有害な刺激を不快感としてキャッチするので、されている人は逃げたくなる。

一方、上手な圧は、人体が求め、必要とする刺激なので心地よい。痛みは伴うが、いい痛みに対しては脳が脳内に快感物質を放出するため痛みは相殺され、痛いのに気持ちがいいという状態になる。この状態を作れるかどうかは、指圧が神経に響かせる音色の純度に依存する。

美しい音色が正しいフォームとそれを正確に行うトレーニングによって生み出されるのはこういう理由なのだが、例外はある。
タイでタイマッサージの先生をしているような人でも猫背で腰が後ろに引けた状態で指圧を行う人がいる。あるいは手首を固定せずに、手首を回して指圧する人がいる。ところが、その人の指圧は極めて安定していてこの上なく気持ちがいい。結果がよければ、そのやり方は間違っていると否定し去ることはできないので、そういうやり方もあると認めざるを得ない。これは、スポーツで言えば、野茂のような個性的なフォームというべきものであろう。人それぞれ癖や骨格が違うので、その人に合ったやり方を無理に矯正すべきではない。しかしながら、野茂のフォームは外面的には個性的だが、ピッチングの本質的な基本はクリアしているはずだ。

悪い姿勢でのタイマッサージは、施術者の故障の原因になりうるし、本当に強い指圧を入れることができない。一般的にはやはり正しい姿勢とテクニックを学ぶべきであろう

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