タイマッサージ講座 - 最新エントリー

合掌の意味

カテゴリ : 
タイマッサージの技術
執筆 : 
camel 2010-5-2 16:00


タイマッサージを始める前には必ず合掌を行うこと、と教わる。

別に仏教徒ではないのだが・・・

と、ためらう方もいらっしゃるだろう。しかし、この合掌には深い意味がある。それは信仰心とか礼儀という意味ではなく、タイマッサージの一つのテクニックとしての意味である。

「気」という言葉がある。科学的には未だに謎が多いが、体から発せられる電磁波や熱、音、空気の流れ(気配)が、人から人に伝わっているのが気である。誰かと一緒にいるとき、その人がすごく幸せな人ならこちらもなぜか楽しい気持ちになるし、機嫌が悪い人だとストレスになる。このように、集団で生活する人間は一緒にいる人と気分や体調が同調するようにできている。

タイマッサージは相手をリラックスさせ、ストレスから解放して幸せにしてあげることを目的とする。だからまず、施術者が幸せな気持ちに包まれて、いい気を体から、手から、そして語りかける声から発散させなければならない。緊張していたりいらいらしていたらその気は必ず相手に伝わる。それではいいマッサージはできない。

タイマッサージで合掌するときには、自分が未熟であることを仏に伝え、仏のお力をお借しくださいと祈りなさい、とタイマッサージの学校では教える。治してやるという傲慢な気持ちではなく、そういう謙虚な気持ちで祈るならば、仏にお任せすることで自分の責任は楽になり、体の力は抜け、幸せな気持ちになるだろう。念仏やお経を唱えるだけで幸福になると心から信じている仏教徒は念仏(マントラ)を唱えるだけで瞬間的に副交感神経優位の変性意識(半分寝ているような瞑想状態)に意識を変化させることが出来る。こういう変性意識の時に脳のアルファ波は最大化し、手は暖かくなり、全身からいい気が発せられる。

では私のように信心深くないものはどうすればいいのか?

要は幸せな心の状態を作ればいいのだ。好きな音楽を聞いても変性意識は形成される。それ以外にも、相手への感謝の気持ち、過去のいい思い出、何でも良い。合掌の時間を借りて気持ちを落ち着かせ、喜びに満ちた気持ちを自分なりにつくればいい。

合掌によってまず自分がリラックスすることは極めて重要なのだ
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ストレッチが効かない

カテゴリ : 
タイマッサージの解剖学
執筆 : 
camel 2010-4-28 18:00


前回の説明にも用いた、このストレッチ技。膝関節を伸ばすこともできるが、アキレス腱を伸ばすのに用いられる。

しかし、このストレッチが全然気持ちよくないという人がいる。ヨガのインストラクターのような体が非常に柔らかい人である。

こういう人を相手にする場合、気持ちの良くないことをする必要はない。いくらヨガのインストラクターといっても全身ふにゃふにゃということはないので行うべきことは必ず見つかるだろう。

ところで、この人はなぜアキレス腱のストレッチが効かなかったのか?それを理解するには、関節における圧迫と伸張の概念を理解する必要がある。

関節がそれ以上伸びない(伸展しない)理由は人によって「筋肉の伸張」か「骨の圧迫」のどちらかである。体が硬い人は、筋肉が固まっていてそれ以上伸びないから関節が広がらない(例えば股関節、力士やバレリーナは180°開脚ができるが、一般人は無理だ)。なぜ関節が広がらないかと言うと、筋肉が固まっていて伸びないからだ。「筋肉の伸張」が足りないために関節の可動域が限定される。そういう人には関節を広げて伸びない筋肉をストレッチしてあげることは有効だ。固まっている筋肉が伸びると気持ち良さも感じられるだろう。

では、体が柔らかい人は関節はどこまででも伸展するかと言えばそうではない。例えば肘。猿腕の人であっても伸びる角度は200°くらいが限界、それ以上は曲がらない。関節の構造上、骨と骨がぶつかってそれ以上開かないからだ。これが「骨の圧迫」である。肘関節は誰でも骨の圧迫点まで行くが、人によっては足首のアキレス腱も骨の圧迫のところまで伸びる人がいる。それがアキレス腱のストレッチが気持ちよくない人だ。

骨の圧迫のためストレッチできない場合は素直に諦めることだ。それ以上力を入れても、骨と骨がぶつかって痛いだけだ(関節損傷の危険が出てくる)。そもそも既に弛緩している筋肉をストレッチしようとしていることがナンセンスだ。

解剖学的に骨、関節、筋肉を理解することは、個人差を理解することでもある。人によって気持ちがいいことは異なる。型や手順に拘って気持ちが良くないことをがむしゃらに行うことは間違いだ。その人が気持ちがいいことを見つけてあげるためにも解剖学は道しるべになる
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関節、骨の保護

カテゴリ : 
タイマッサージの解剖学
執筆 : 
camel 2010-4-27 17:48
タイマッサージでは基本的に骨や関節は押さない。骨格は施術の対象外である。

施術の際には、骨、関節を損傷しないように気をつけなければならないが、それはどのような考え方で行ったらよいのか、具体例をあげながら説明する。

下の写真は、仰向けで脛の筋肉(前脛骨筋)を手根で押す手技である。このときに、膝関節が伸びきらず、膝とマットの間に隙間ができる人がいる。それを無視して押すことは正しいことか?



正しいとも言えるが、厳密には正しくない。
膝が伸びない原因には色々あるが、ハイヒールを履く等の理由で膝を伸ばしきらない歩き方をしていたり、運動不足や筋力不足によって膝関節の筋肉が縮んでしまっていることが多い。

この場合、膝を曲げる筋肉をストレッチにより伸ばしてあげることは良いことだ。前述の手技をストレッチと解釈するなら押すことは正しいことになる。

しかし、この手技は本来、膝関節をストレッチするのが目的ではない。前脛骨筋を押圧して解すのが目的だ。前脛骨筋への適正圧力はかなり高い。その圧力は膝を伸ばすのには強すぎる。結果的に、膝に対しては強すぎる力がかかるため危険である。かといって、力を緩めれば前脛骨筋を解す目的が達成できない。

ではどうすればいいかと言うと、手技の目的を一つに決めることである。前脛骨筋を押したいなら、膝の下にクッションを置いて膝を保護して、しっかり押す。膝を伸ばしたいなら、下の写真のテクニックで膝を伸ばすストレッチを行う。



ここで一つの疑問が沸いてくる。「膝をストレッチするにしても、強すぎるストレッチでは膝関節に悪いかもしれない。ストレッチをどの位までするかはどう判断すればいいのか?」

この疑問には明白な答えがある。

「気持ちのいいことをやりなさい」

相手に声をかけ、気持ちがいいか、痛いか確認する。表情を見てどう感じているかを類推する。体を触っている掌をセンサーとして使い、相手が痛がっていないか感じる。五感と会話を総動員して、相手の体の声を聞いて、気持ちのいいことだけをする。これが答えだ。実は骨や関節に適切なストレスを与えることは悪いことではない。気持ちがいい範囲でストレスを与えることで骨の成長を促し、骨密度が上がる。骨も生きているのだ。

タイマッサージは気持ちがいいと言われるし、気持ちがいいことをやりなさいと教えられる。その言葉は解剖学的にも非常に理にかなったことなのだ
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危険な手技の回避

カテゴリ : 
タイマッサージの解剖学
執筆 : 
camel 2010-4-5 18:34
胸の筋肉(大胸筋)を伸ばすストレッチの方法、
ピシットタイマッサージトレーニングスクールで、禁じ手となっているのが下の写真。



このストレッチは胸の筋肉が広がってとても気持ちがいい。なぜ、禁じ手なのか? 理由は、前回解説したケースと同じで、大胸筋が伸びきった状態で、後ろから強い力を与えると背骨や肋骨を損傷する危険があるからである。

ピシット先生が推奨する方法が下の写真だ。



この方法は体幹を捻ることによって大胸筋のストレッチを行っているので安全だ。

このように、一つの手技で何をしようとしているのか、筋肉レベルにまで分解して考えれば代替手段はいくらでもある。安全かどうかだけでなく、体格差や体重差によりある手技が不可能な場合も、解剖学的にその手技の目的を理解していれば他の手技で同じ効果を上げることができる。シーケンスの流れに囚われ過ぎて特定の手技に執着すべきではない。

ところで、この2つの手技はどちらも大胸筋を伸ばすことを目的としているが、付随する効果はずいぶん異なる。最初の写真では、背中の筋肉を足の親指で指圧する、腕を伸ばす、そして一回で大胸筋両側を伸ばせる、というメリットがある。

後の写真は、二の腕と広背筋が同時に伸ばされるというメリットがある。

タイマッサージの手技は複合的な効果を持つ場合が多いので、一つ一つの手技の意味を解剖学的に理解することが出来れば、どういう手技を組み合わせれば効率よくすべての筋肉を解すことができるか自分で構成を考えることが出来るようになる。
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危険な手技とは

カテゴリ : 
タイマッサージの解剖学
執筆 : 
camel 2010-3-25 9:19
どんなときに骨に損傷を与え得るか理解するためには、まず、解剖学的に人体の構造を知る必要がある。

下の写真は、ヨガのマールジャーラ・アーサナ(猫のポーズ)である。左側は猫背にして背中側の筋肉を伸ばしている。右側はお腹を下げて腹筋を伸ばしている。左側のポーズの時に背骨を上から押しても安全だ。なぜなら、背筋が伸びているとき、拮抗筋である腹筋は縮んでいる。上から背骨を押して背骨を折るには、腹筋を伸ばしきらなければならない。しかし通常、腹筋の筋力の頑張りがあるので背骨は守られる。



右のポーズではどうか。腹筋は既に伸びきっているため、背骨を瞬間的に押された場合、腹筋は背骨を守ることが出来ない。右のポーズでは上からの力に対して体は無防備だ。

話が少し脱線するが、「腰痛がある人は腹筋を鍛えなさい」というのも同じ原理による。腹筋は背骨(腰椎)を衝撃から守る、別の言い方をすれば腹筋は腰椎への負担を減らす役割を果たしている。膝痛もそうだが、関節への負担を減らすには関節周りの筋肉を鍛える必要があるのはこのためだ。

この原理に基づいて、どんな手技が危険かについて説明する。

腰痛の緩和に効果的なポイントは、脊柱起立筋の腰椎の部分である。指でも押せるが、強い圧をかけるために膝が用いられることが多い。下の写真は、相手を横向きにして上から膝を当てて体重をかける方法。この姿勢では腹筋は伸びきっているので、上から乗った場合、背骨に負荷がかかる可能性があり危険である。もちろん、押圧ポイントを熟知し、正確に膝を当て、相手の体の状態を完全に把握しながら、慎重にゆっくり適正圧をかけることができる熟練者なら安全に行うことができるのだろうが(それでも一瞬の気の緩みが危険に繋がる可能性はある)、強い圧をかけることに夢中になっている初心者がやるべき手技ではない。



ではどうすべきか。タイマッサージにはいくつもの別のテクニックがある。同じ横向きで膝を入れる方法でも安全なのが下の方法である。上から乗る方法との違いは、自分の体重で押していないことだ。ではどうしているかというと肩と脚を持って引いている。体重だと全体重が瞬間的に乗ると危険だが、引く場合は自分の体重を乗せていない、そして、確実にゆっくり行うことができるので安全だ。ピシット先生が教える最新のタイマッサージでは、強い圧を入れる必要がある場合、このように「引く」テクニックをうまく使うのだが、引くことで安全性も確保しているのである。



余談になるが、このように引くテクニックを使うと、大胸筋、腹筋、大腿直筋が引かれてストレッチされるという副産物が生まれる。「引き」のテクニックは、一つの手技で複数の筋肉に働きかけができるので効率が数倍に高まる優れた方法でもある。
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タイマッサージをする上で危険なことは何か。高血圧や心臓病といった血流に関することなど色々あるが、まずは、骨折、そして関節の損傷だろう。
筋肉を押したり伸ばしたりするので強くやりすぎると筋繊維や腱を損傷する可能性は全くは否定できないが、骨や靭帯、関節の結合組織を壊すことの方が現実的に深刻だ。

もちろん腱を切ってしまうようなことも深刻だが、通常そこまで強く引っ張ったり押したり出来ないし、筋肉は切れる前に防御機構が働いたり、強烈な痛みで悲鳴が上がったりするので筋肉を切る確率は低い。しかし、骨や靭帯、関節は一瞬の力加減で破壊してしまう可能性があり、一旦破壊してしまうと、自然回復が難しく、手術をして繋ぐか、あるいは一生後遺症を背負わせることになる。最悪の場合、死に至る可能性も排除できない。

次回は、どういうとき、どんな手技でそのようなことが起こり得るか説明する。
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タイマッサージを仕事にしている方は、「解剖学の知識も持っていないといけない」という強迫観念があると思う。お客さんに質問されたときに答えられないとかっこ悪いから、知らないで施術をするのは何となく不安、など理由は様々だろう。

では、タイマッサージをするにあたり、解剖学の知識は必要か?

条件付きだが、「解剖学を学ぶ必要はない」が、私の答えだ。

条件と言うのは、スタイルとして、ワットポースタイルやピシットスタイルのように、解剖学の知見から安全性を十分に考慮して構成された、近代のタイマッサージを行う場合である。これらの手技は基本に忠実に行う限り、まず怪我をさせることはない。それほど安全に設計されている。実際にワットポーで働くマッサージ師達は(一応解剖学の講習は終えているが)解剖学的なことはほとんど考えず手技を日々磨いており、スクールの30時間コースで習うベーシックマッサージを基本に忠実に正確に行うだけだ。小円筋とか僧帽筋とか筋肉の名前を覚えたところで施術が変わるわけでもないし、そんな解剖学の知識は役にも立たない。そんなことよりも、押すべきポイントの精度を上げ、圧を適正にする方がずっと大事だ。
そして、そんなワットポーの評価はどのマッサージサロンよりも高い。ワットポーのタイマッサージは解剖学を学ばなくても安全で、完全な効果を生み出せる偉大なスタイルなのだ。

しかし、チェンマイスタイルやピシェットスタイルのような「古式」タイマッサージを行う場合は話が違う。古い手技には、生半可な経験や知識で行うと危険を伴う手技が含まれている。だからその危険性を十分に理解していないと顧客に怪我をさせてしまう恐れがある。ワットポーの卒業生であっても、他の流派の手技を自分の施術に取り入れようと思ったとき、その手技が安全かどうかの判断ができないと危険である。

解剖学を学ぶメリットはいくつかあるが、手技の危険性を理論的に理解するというのが第一の目的だと言える。次回は、どのような手技が危険かについて説明する。
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近々スタートします。

カテゴリ : 
タイマッサージの解剖学
執筆 : 
camel 2010-3-13 20:42
講座というほど立派なものではありませんが、私がタイマッサージについて学んだこと、先生から教わったこと、色々な人から教わったこと、気がついたこと、等々、綴っていきたいと思います。

まずはタイマッサージの解剖学から近日中にスタートいたします。

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